東京ヴァルハラ異聞録
その一撃で、三宅の身体は群衆の方に吹っ飛び、ゼロ・クルセイダーズを巻き込んで動きを止めた。


「結城、お前……強くなったな」


そう言って、手を軽く挙げた川本。


それに合わせるように、手を打ち付けてパンッと音を鳴らした。


メリケンサックは一対の武器。


片手を切断すれば、身体能力は半減する。


久慈に匹敵する力だと言うのなら、力を引き下げれば勝機はあるとずっと考えていた。


それが上手くハマった感じがする。


そんな事を考えていたら、群衆からどよめきが起こった。


三宅が、あの一撃を食らって立ち上がったのだ。


膝はガクガクと震え、口からは大量の吐血があるが、左手でPBTをポケットから取り出して。


「まずい!瞬間回復されたらふりだしだ!結城、止めるぞ!」


「はいっ!!」


日本刀を鞘に納め、俺と川本は三宅に向かって駆け出す。


「邪魔はさせないから!!」


そんな俺に向かって、歩道橋の上から美佳さんが矢を放つ。


凄まじい速度と正確さで、俺の頭部を目掛けて矢が迫る。


「危なっ!」


それを間一髪首を傾けて回避したつもりだったけれど、左耳をかすめる。
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