東京ヴァルハラ異聞録
三宅の指が、PBTの画面に触れる。


それを援護するように、美佳さんの矢が次々と俺達に迫っていた。


居合の為に日本刀を鞘に納めているけど、まだ足りない!


鞘に入れて抜けば、威力が上がるというわけではないというのが、手に伝わる感覚でわかる。


この攻撃は、鞘に納める事で「溜め」を作っているんだと。


さらに、美佳さんの正確な攻撃が俺達の前進を僅かに遅らせていた。


あと少し……この距離なら、左手を切断するくらいなら出来るか!?


日本刀を抜くが、溜めが不十分だったようでいつもと同じ速度。


さらに、美佳さんの矢が俺に向かって放たれたのが見えた。


「間に合えっ!」


PBTを持つ左手を切断しようと、日本刀を突き出す。


だけど……。






「くっ……はははははっ!!残念だったなクソガキ!!回復したぜ!これで最初から……」





瞬間回復を終えた三宅が、俺の日本刀を避ける為に左手を振り上げた時だった。


一直線に、俺の頭部を目掛けて放たれた矢が……。








三宅の左手とPBTを貫いたのだ。








矢は、左手とPBTを串刺しにして止まる。


何が起こったか理解出来ない様子の三宅と美佳さん。


その表情に、俺に一瞬の迷いが生まれた。
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