東京ヴァルハラ異聞録
「う……うう……た、助けてくれ。身体中が痛くて死にそうだ……もう……戦えねぇ」


PBTを破壊されて、回復が出来なくなった三宅は、完全に戦意を喪失したようだ。


「た、頼む……殺さないでくれよぉ……」


俺の足元まで這い寄り、足にすがり付くけれど、手に力が入っていないのがわかる。


そんな姿を見て、哀れだとか可哀想だなんて感情は全く湧かなかった。


むしろ、怒りと悲しさが湧いて。


「ふざけるなよ……何が篠田さんの後継者だ!!篠田さんは……PBTを破壊されても秋本と戦った!!お前みたいに命乞いなんてしなかった!最後まで、弱い所なんて見せなかったのに!お前は!」


三宅の胸ぐらを掴み、声を荒らげて怒りをぶつけた。


「頼む……頼むよ……ゲフッ!!」


そしてまた、大量の吐血。


「結城、殺してやりなよ。私の攻撃でこいつの内臓はズタズタだ。普通の人間ならとっくに死んでる。回復が出来ないなら、待っているのは死だけだ」


川本にそう言われ、俺は悩んだ。


PBTを破壊された状態での死は、永遠の死。


こんな殺し合いの街にいながら、俺はそれだけは避けたかったから。


梨奈さんと篠田さん。


二人の永遠の死を目の当たりにしたから。
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