東京ヴァルハラ異聞録
俺が何もしなくても、三宅は緩やかに死ぬ。


死ぬ寸前まで苦痛を味わいながら。


「どうすれば良いんだよ……俺は」


「何が正しいかなんて、自分がどう思っているかだけだよ。私と結城は敵軍同士なのに一緒に戦った。こいつらからすれば、お前は味方に牙を剥いた。だけど、お前は私を助けようとしてくれたんだろ?お前は間違った事をしたのか?」


それは……川本を死なせたくないという想いからだけど、その代わりに三宅が死ぬという結末になってしまった。


どんな選択をしても、誰かが死ぬ運命だったのか?


きっと、これから先もこんな思いをする事が出てくるんだろうな。


俺には……この覚悟が足りないのかもしれない。


「はぁ……はぁ……苦しい……死ぬ……」


このまま三宅を見捨てるのは簡単だ。


だけどそれは、目の前の問題から逃げているという事で……篠田さんを殺した久慈から逃げた事と同じかもしれない。


俺は……何がなんでもあの時、久慈から話を聞くべきだったのかもしれないな。


迷いはまだあった。


本当にこれが、正しいのかと。


皆……迷いながら、自分が信じる道を求めて見えない道を歩いているのかな。


そんな事を考えながら……俺は逆手に持った日本刀の先端を、三宅の背中に当てた。
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