東京ヴァルハラ異聞録
三宅は死んだ。


それを見届けたゼロ・クルセイダーズは、俺達と戦おうとはせずにこの場から離れて行って。


しばらくして、雨が降り始めた。


この街にも雨は降るのかと、天を見上げて。


「昴くん……キミには言葉では言い表せないほど感謝をしています。南軍と西軍という違いはありますが、何かあれば私は昴くんの為に駆け付けますから」


雨の中、マスターが俺の手を取り頭を下げる。


「わ、私は助けてもらったなんて思ってないからな!隙を突いて逃げ出す事だって出来たんだ」


強がる川本に、マスターが近付いて指差して怒る。


「そういうとこですよ!今回捕まったのも、そういう川本さんの悪い部分が出たんです!素直にお礼を言うべきですよ、こういう時は!」


「わ、わかったよ大塚さん。あ、ありがとな、結城。お前、本当に強くなったよ。初めて会った時はそんなでもなかったのにさ」


少しバツが悪そうに、頭を掻きながら。


「ああ……うん」


俺は、そう返事をするのが精一杯と言うか。


今まで、人を殺しても生き返ると思っていたから、本当に人を殺したという事実に放心状態だった。


「……昴くん、自分が信じる道を進めば、納得出来ない事態に直面するでしょう。それで進む事を諦めるか、それでも突き進むかを決めるのは自分自身ですよ。自分の道を進むつもりなら、その覚悟は大事ですからね。では、我々はこれで失礼します。また……会いましょう」


そう言い、深々と頭を下げたマスターは、川本と二人を連れて南軍へと帰って行った。
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