東京ヴァルハラ異聞録
「何にせよ、これで共闘する必要はなくなったわけだ。ゼロ・クルセイダーズがなくなれば、内の心配が一つ減るわけだからな。お前ら、帰るぞ」


そう言って、橋本さんが部下を引き連れて帰ろうとした時だった。


「ならば、心配事を無くしてあげましょうか?私が侵攻部隊も統治すれば、あなたが頭を悩ませる事もないでしょう?」


メイド服に身を包んだ月影が、一本の細剣を取り出して橋本さんに向けた。


「……月影。俺に武器を向けるとはどういう事が、その意味を理解しているんだろうな?」


対する橋本さんは、刀身にトゲがある、ノコギリのような両刃の剣。


一触即発……そんな雰囲気が漂っていた時、それを止めたのは悟さんだった。


「ま、待ってくださいよ!!なくなったとは言え、一度は共に戦うって言ったじゃないですか!こんな所で戦わないでください!」


「黒部さん、あなた方はどっちの味方なんですか?最もここには、所属が明確でない人が沢山おられるようですけれど」


俺や千桜さんを見て、月影がそう尋ねる。


「俺は……どっちの味方をするつもりもありません。前みたいに、一丸となって西軍を守りたいだけです!」


悟さんがそう言うと、橋本さんはフンッと鼻を鳴らし。


「興が削がれた。帰るぞお前ら」


そう言って武器を納め、今来た道を戻って行ったのだ。
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