東京ヴァルハラ異聞録
一瞬、何が何だかわからなかった。


千桜さんに腕を掴まれ、グッと後方に引かれるまでは。


「まさか……英太さんは俺達を始末する為にここに!?」


「バカ!私と悟が、結城と一緒にいるなんて知らないだろ!英太さんの狙いは……」


そう言って愛美が俺を見ると、そこにいた全員の視線が俺に向いた。


御田さんは……俺を殺す為に待ち構えていた?


だとすると、篠田さんを殺した久慈の味方をしているという事か。


「そういう事じゃな。坊主……いや、結城昴。ここは天井も高いし広い。戦うには十分だ。ワシよりも奥に行く事が出来たら……ここを通してやろう。お前達全員をな」


笑いながら、親指を立ててエレベーターの方を指差した。


久慈と戦う覚悟はしていた。


だけど、まさか御田さんと戦う事になるとは。


「ダメですよわたるくん!キミが英太さんに勝てるはずがない!いや……西軍の誰も、英太さんには勝てないですよ!」


「千桜さんの言う通りだな。ここは俺達も戦う。英太さんよりも奥に行けば良いだけだろ?だったら、勝機はあるはずだ」


「悟さん!?何を言ってるんですか!!勝機だって?正気じゃないってわかってるんですか!」
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