東京ヴァルハラ異聞録
「くっ!」


御田さんに接近しながら、斧刃の下を潜るように身を低くして日本刀を抜く。


力は溜まった。


いくら御田さんと言えども、この速度に付いて来られるか!?


刃が鞘から抜かれる!


「どっせいっ!!ワシがさせると思うてか!」


と、思ったのに、斧の柄を俺の右腕に押し付けながら垂直に立てて、抜刀するのを防いだのだ。


なんて……力だ!


これが御田さんの力なのか!?


さらに柄を蹴り上げ、俺を後方へと弾き飛ばした。


空中でクルリと回転し、何とか着地の体勢を整えたものの、振り出しに戻るといったところか。


「さすがは御田さん。とんでもなく強い」


「世辞を言ってもここは通さんぞ?」


まともにぶつかってもダメか。


だったら、あの斧の攻撃範囲外からやるしかないな。


「これで終わりにします」


そう呟いて、日本刀を鞘から引き抜いた。


光の筋が鞘から、視界の右斜め上に掛けて走った。


が、それに合わせて御田さんが斧を振り下ろしていた。


ガンッと斧が床を斬り裂いたと同時に、床に横一文字に亀裂が走ったのだ。


俺の一番強い攻撃が……こうもあっさりと防がれてしまうなんて。
< 499 / 1,037 >

この作品をシェア

pagetop