東京ヴァルハラ異聞録
「ああああああああぁぁぁっ!!」


左腕に続いて右腕まで!!


ダメだ……俺の攻撃が全く通用しない。


全てを見透かされたように、御田さんの攻撃が面白いように当たってしまう!


「両腕を失って、武器も取り出せん。これが戦場なら、お前はこの時点で死が確定したわけだが……」


両膝を床に突いて、御田さんを見上げる俺の首に斧刃がピタリと当てられた。


結局、両腕を失うまで戦って、御田さんにはかすり傷一つ付いていない。


これが、俺と御田さんの差というわけか。


「勝負はワシの負けのようじゃな。ワシを殺せるか……ではなく、ワシよりも奥に行けるかどうかだからな。お前がいる場所を見てみい」


そう言うと御田さんは斧を放して、床を指差して見せた。


確かに、御田さんよりも奥にいる。


だけど……これは、御田さんがそうなるように導いてくれたとしか思えない。


わざと、勝ちを譲ってくれたようにしか。


それがわかるのか、観戦していた皆の表情も不思議そうなもので。


美姫一人だけが喜んでいた。


「英太さん。最初から、こうするつもりだったんですよね?どうしてこんな茶番を?」


戦闘を見ていた悟さんが、首を傾げてそう尋ねると、御田さんは豪快に笑って見せた。
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