東京ヴァルハラ異聞録
強く、そう言った俺に、恵梨香さんが睨み付ける。


まるで殺意を向けているような……ピクリとでも動けば殺されてしまいそうなほどの緊張。


「それは、本気で言っているのか?私の……協力を断ると」


「は、はい。高山真治の力にいつまでも頼るわけには行きません。それに……恵梨香さんも、俺に高山真治をダブらせるのを辞めた方がいいと思うんです」


この言葉は、俺にとっては賭けだった。


共にバベルの塔を目指すなら、恵梨香さんの力は必須。


だけど、この言葉でそれが潰えてしまうかもしれないのだから。


それどころか……ここで敵対してしまう可能性だってある。


ピリピリとした空気の中、口を開いたのは恵梨香さんだった。


「ふふ……ハハハッ!まさか昴少年に諭されるとはな。私もヤキが回ったものだ。そうだな……昴少年は真治少年ではない。それに……私よりも傍にいるべき者がいるようだ」


チラリと沙羅を見て、フッと笑って見せた。


「え、恵梨香さん……ありがとうございます」


「なぜ礼を言われなければならないのだ?昴少年は、立ち止まっていた私の背中を押してくれたのだ。こちらこそ礼を言いたい。ありがとう」
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