東京ヴァルハラ異聞録
「北にスカイツリーがあって……後は住宅街が多いのかな、東軍は」


西軍や北軍と比べると、落ち着いた街並みと言うか。


民家が多いのは俺にとっては安心する。


「お腹空いたよぉ。どこでも良いから早く入ろうよ」


ずっと美姫のお腹が鳴っている音が聞こえている。


この様子じゃ、いざ戦闘になったら全く力を発揮出来ないよな。


「わかったわかった。じゃあ……あ、そこに中華料理屋があるから入るか」


少し先にある看板を見付けて、指差して見せると、美姫は嬉しそうに走り出して。


「もう、何してるのよ!早く行くよ!ほらほら!ご飯!」


いや、なんだ……元気じゃないか。


俺と沙羅は、はしゃぐ美姫を見ながら歩いて中華料理屋に。


美姫はそれほど金を持っていないから、結局金を払うのは俺なんだけど。


店のドアを開け、中に入るとそこには……店の半分を埋めるほどの人がいたのだ。


まずいな……こんな場所に人が集まっているなんて。


バベルの塔の近くだから、そんなに人がいないと思っていたのに。


これは誤算だった。


だが、カモフラージュは使っているし、飯を食うだけだから、刺激をしなければおかしな事は起こらないだろう。
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