東京ヴァルハラ異聞録
「油淋鶏とー、青椒肉絲とー、小籠包に麻婆豆腐でしょ。あとは……」


席に座り、美姫が嬉しそうにメニューを見て料理名を並べる。


沙羅もだけど……よくこんな状況でご飯を食べる気になるな。


この店に入ると言ったのは俺だけど、店に入ってから荒そうな男達がずっとこちらを見ている。


山賊か何かの溜まり場かよってくらい荒そうな男達だ。


そんな中に、一人だけ女性がいる。


昼間っから酒を飲んで、男達に負けていない。


「昴くん……奥の女の人。他の人達とは全然違う。強いよ、油断しないで」


俺の耳元で囁いた沙羅に、小さく頷いた。


確かに、あの人は異質と言うか……他の男達とは全然違う。


俺のPBTを使い、テーブルに次々と料理を出現させる美姫。


こんなに食べ切れるのかと思うくらいの量を出すのが美姫なんだよな。


「いただきまーす！」


頼むだけ頼んで、それを食べ始めた。


「す、凄いね美姫ちゃん。そんなに食べるんだ？」


「ふーんだ！大食いで悪かったわね！そんなに細いんだからあんたはさぞかし少食なんでしょうね！」


三人しかいないのに、なんで美姫は沙羅に突っかかってるんだよ。


先が思いやられるな。
< 626 / 1,037 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop