東京ヴァルハラ異聞録


闇に堕ちる……。




そんな感じだろうか。


意識を失う直前に、何かが俺の身体に入って、押し出されたような感覚があった。


あれが何だったのかはわからない。


緩やかに意識が戻って、身体に感じる冷たい風が、俺を起こそうとして。


瞼を開けてみると、目の前にはアスファルトがあって、道路で寝ていたのだというのがわかった。


空は暗く、夜まで寝ていたのかと溜め息をついて。


「くぅ……な、なんなんだよ。何で俺はこんな所に」


あのドリンクに睡眠薬でも入れられたのか?


拓真と麻衣がそんな事をする意味がわからないけど、とにかく家に帰らないとと思い、身体を起こして立ち上がると、辺りを見回して財布を探した。


「ない、ないぞ!?くそっ!あいつらが盗ったのか!?外に放り出すなんてどういうつもりだよ!」


そう独り言を呟くものの、それよりもここがどこなのかという疑問が頭に浮かんだ。


俺は秋葉原にいたはずだけど……なんだかそれとは様子が違うビルが建ち並ぶ場所。


「う、うう……何が起こったのよ。電車に乗ろうとしてたのに……」


ビルを見上げていた俺の背後から聞こえた声に、慌てて振り返ると、そこには女性と男性の姿が。


頭を押さえて立ち上がろうとする女性を見て、俺と同じように混乱しているのだと判断した。
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