東京ヴァルハラ異聞録
「あれ?おっかしいなぁ。今ので心臓を貫いたと思ったんだけど。自信なくしちゃうな」


速い……そして強い。


有沢も強かったけど、悟さんがいたから何とかなった。


こんな強い相手、今までに戦った事がない!


不安が、恐怖が、俺を包み込もうとしている。


「でも、ラッキーだったな。お前を倒せば俺は南軍に戻れるんだからさ」


「俺だって……負けるわけにはいかない!」


左腕を斬られたけど、まだ動く。


しっかりと両手で柄を握り、光輝の動きに集中する。


「ふーん。まあ、お互い譲れない物があるよな。ただ人を殺すのを目的としてるやつより、お前みたいなやつの方が俺は好きだけどな。敵じゃなけりゃ」


トントンと、つま先で地面を蹴り、次の瞬間俺の目の前まで剣が迫っていた。


だけど、なんとかその軌道を見る事は出来た!


日本刀を振り上げ、剣の軌道をずらす。


光輝の表情が驚いたものへと変わったが、すぐさま俺に蹴りを入れ、俺は後方に吹っ飛ばされた。


地面を転がる間にも、光輝の攻撃は続く。


何度も何度も刺突を繰り返すが、それを回避するように地面を転がり続けて。


膝を付いて、素早く起き上がったけれど、すでにそこには光輝の剣の切っ先が迫っていた。
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