東京ヴァルハラ異聞録

まずい！！


反射的に首を右に曲げたけど、剣が俺の頬をかすめ、左耳を斬り裂いた。


「ぐっ！！」


鋭い痛みが走り、温かいものが耳から溢れ出ているのがわかる。


だけど目の前には光輝。


ここしかない！


祈るような想いで、光輝の胸を目掛けて日本刀を突き出した。


「おっとぉ！危ない！」


だが、その攻撃でさえも読まれていたかのように、身体を捻って回避したのだ。


俺が振り返りながら日本刀を横に振るけど、それすらも光輝は着地と同時に剣で受け止めて。


圧倒的な力の差を見せ付けられて……俺はどうしてこんな決闘を受けたんだと後悔し始めていた。


「強い……」


「当たり前だろ？と、言うよりお前が弱すぎるんだよ。目は良いみたいだけど、身体がついて行ってないんじゃないか？」


全くその通りだと思うよ。


こんなにベラベラ話が出来るのも、俺より強いという余裕があるからだろう。


このままだと負ける。


真由さんの情報が得られない！


「さてと。弱い相手をいたぶるのは俺の趣味じゃないんだよね。だから、これで……」


と、剣の切っ先を俺に向けて駆け寄ったその時。


俺の首の辺りを薙ぎ払うように、槍が通り抜けたのだ。