東京ヴァルハラ異聞録
「ふごっ!……ってなんだ!?なんでこんな所で寝てんだよ!」


男性の方も目を覚まして、驚いたように辺りを見回して。


「ちょっと……ここどこよ。浅草橋じゃ……なさそうだけど」


どうやら、この二人も俺と同じように違う場所にいたようだな。


どうしてこんな所にいるかわからないけど、早く帰って拓真と麻衣を問い詰めなければ。


「あー?ここは……人形町か?でも、何か変だぞ?どうして車が走ってねぇんだよ。道の真ん中で停まってやがる。運転手もいねぇしよ」


男性の言う通り、不思議な事に車が車道の真ん中で停車していた。


人通りもなくて、まるでゴーストタウンだ。


「人形町!?……って、ホントだ。看板がある」


よく見ると、飲食店の看板に「人形町」と書いてあるから間違いではないと思う。


「んだよめんどくせぇな。なんで人形町にいるかわかんねぇけど、駅も近いし帰るぜ俺は」


そう言って歩き出した男性。


キャップにパーカー、耳には何個もピアスを付けたヒゲを生やした、あまり関わり合いになりたくないタイプの男性だ。


女性の方は、OLといった感じで、スーツ姿なのが安心感を与えてくれる。
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