東京ヴァルハラ異聞録
悟さんが光輝に突き付けた槍。


二度同じ手は食わないだろうと考えた俺は、悟さんの槍に重ねるようにして日本刀を突き付けた。


もしも、悟さんが森島との戦いに集中していれば、俺を助けてくれる事はなかっただろうし、気にしてくれていたからそれが出来た。


その悟さんも、森島の両手剣を柄で受け止めている。


「昴を助けながら戦う。森島、お前が相手ならそれくらいわけないって事だな」


余裕を見せて、ニヤリと笑ってみせる悟さん。


「つまらない手に引っ掛かった……運がなかったな……」


剣から手を離し、地面に膝を付いて倒れる光輝。


勝った……という実感なんて全然ないけど、何とかなった。


腹部の激痛に耐えようとするけど……俺も足がふらついて地面に膝を付いた。


本当に、運だけで勝てたようなものだ。


「はぁ……はぁ……勝てた……のか」


「ああ……お前の勝ちだ……ぐふっ!!」


そう呟くと、光輝は吐血して光の粒へと変化したのだ。


だけど、俺の出血も酷い。


今までにこんな怪我をした事がないからわからないけど……このまま死んでしまうのかな。


そう思った時、俺と光輝を繋いでいた光は消え、何かから開放された実感と共に、俺は地面に倒れた。
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