東京ヴァルハラ異聞録
「……くん!昴くん!いつまで寝てるの!ほら、起きて!!」
どこかで聞いたことのある言葉が俺の鼓膜を震わせる。
ゆっくりと目を開けると、そこは道路の真ん中。
「何とか間に合ったわね。ソウル、一つ使わせてもらったからね」
目の前には梨奈さんと美佳さん、そして大勢の野次馬が覗き込んでいて、俺は慌てて起き上がった。
「あ、あれ!?腹が……耳も、怪我してない!?服は破れてるけど……」
不思議な事に、光輝にやられた傷の全てが完治していて、痛みすらなくなっていたのだ。
「ソウルを使うとね、怪我を治す事が出来るのよ。上手くやれば戦闘中だって使えるんだから。まあ、PBTを出すから敵に狙われる危険だってあるけど」
と、梨奈さんが説明してくれるけど、そんな機能があるなら早く言ってくれよ。
それならもっと戦い方があったじゃないか。
「さ、悟さんは!?悟さんはどうなったんですか!?」
慌てて起き上がり、辺りを見回すと……何事もなかったかのように悟さんが野次馬に混じって俺を見ていた。
「よ!だから言っただろ?勝機はその目だって。まあ、ただの脅しを攻撃にするなんて、思っても見なかったけどさ。勝って良かったな」