東京ヴァルハラ異聞録
帰還
「お、おい、大丈夫か?誰か、救急車!」
「それにしても、いきなり倒れるってどうしたんだよ」
「い、いや、なんか突然現れたように見えたけど……俺の目の錯覚か?」
緩やかに意識が覚醒していく中で、そんな声を聞いて俺は目を覚ました。
「あ、目を覚ましたぞ!」
「う……ん。ここは?」
俺を取り囲む人達の中で、身体を起こして辺りを見回すと……そこは見慣れた場所。
秋葉原の、中央通りの真ん中だった。
「東軍にいたのに、どうして秋葉原に……」
頭の中を整理しようとするけど、一体何が起こったのかわからない。
巨大な槍に貫かれて、光に包まれたかと思ったら。
「おい、キミ。大丈夫か?」
「え?ああ、大丈夫です。あっ、ビショップは!南軍が落ちたって聞いたんですけど本当ですか!?」
そう尋ねると、俺の周りにいる人達は不思議そうに首を傾げていて。
「ビショップとか南軍とか……一体何の事だい?頭でも打ったのかな?」
「何って……バベルの塔から光が放たれて、それで!」
立ち上がって、バベルの塔の方向を指差した俺は……その方向にあるはずの巨大な塔がない事に気付いた。