東京ヴァルハラ異聞録
望まぬ邂逅
篠田さんに北軍の侵攻をと言われた俺達は、悟さんに連れられて上野へと向かっていた。


そろそろ12時、昼食を摂る為に牛丼のチェーン店に。


もっといい物が食べたいと美佳さんが言ったけど、いつ所持金が尽きて食べられなくなるかもしれない。


節約するにこしたことはないのだ。


「三人は侵攻の経験がないだろ?攻めるのは、防衛とは全く別物なんだ。まあ、中には侵攻の方が好きって変わった人もいるけどさ」


大盛りの牛丼に紅しょうがを乗せながら、悟さんが俺達に侵攻について話してくれる。


「危険だって話は聞いた事があるわね。それに、北軍には統率された部隊がいくつもあるって」


「そう。総力戦が始まったら、各軍を仕切っている光の壁を越えて北軍に侵攻するんだけど、北軍に入れば矢弾の雨、地上には待ち構えているやつらが襲い掛かって来る。初心者はここで命を落とす事になるね」


平然と牛丼を口に入れて語るけど……想像したらとんでもない状況じゃないか。


「そ、そんな所に私も行くの?大丈夫かな……」


美佳さんじゃなくても不安になるよ。


俺だって、そんな地獄みたいな所を越えられる自信がないから。
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