東京ヴァルハラ異聞録
「月影!全軍通信は出来ないのか!?戦える人達を集めたいんだ!」


「私じゃ無理よ!あれは、各軍の上位何人かしか使えないのよ!そういうあなたはどうなの!」


そうだったのか。


俺が使えればいいんだけどと、PBTを取り出して確認するが、そんな項目はどこにもない。


「ダメだ、俺もその何人かには入ってないらしい。単純な強さじゃないって事か。だったら、御田さんに頼むべきだったか」


なんて考えはしたものの、あの様子では御田さんがやってくれるとは思えない。


上位の人間……誰だ?


いや、考えなくても確実にそうだという人が一人いるだろ!


「秋葉原の万世橋近くのカラオケ店だ、そこに向かうぞ!そこに……西軍最強の男がいる!」


「でも、協力してくれるの!?久慈さんでしょ!?」


沙羅が不安そうに尋ねる。


その不安は、久慈さんだけのものじゃないな。


きっと、真由さんに会う事は、沙羅にとって辛い事なのだろう。


「協力させるさ!こんな時に穴蔵に引きこもって、世界の終わりをただ眺めているなんてさせてたまるか!」


「そうだね。久慈さんも一緒に戦ってくれたら心強いよね」


そう呟いた沙羅を、俺はチラリと見て不安になった。
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