東京ヴァルハラ異聞録
全力で急いでやって来た秋葉原のカラオケ店。


エレベーターで七階に上がり、大きな扉を開けて中に入る。


「……結城昴。ここに何の用で来た?」


相変わらず久慈さんはステージに腰掛けて、俺を睨み付けるように見る。


「単刀直入に言います!全軍通信で戦える人達に呼び掛け、両国へ向かわせてください!この街の危機なんです!この戦いに勝たなければ、人間は終わりです!!」


俺の代わりに月影が言ってくれた。


だが、久慈さんはそれが気に入らなかったのか、月影を睨み付けた。


「お前に聞いていない!結城昴、お前は何の用でここに来た」


「……今、月影が言った通りにしてください。御田さんがオーディンに変わり、バベルの塔にフェンリルが現れました。俺達はこれより、バベルの塔への突入を開始します!戦える人達を集めてください!」


俺がそう言うと、久慈さんはフッと笑ってステージから降りた。


「お前の言い分はわかった。だが、その代わり俺には何をくれる?」


「なに?」


「何をくれると言っている。まさか人に頼むだけ頼んでおいて、見返りがなしとは言わないだろう?」


この人は……こんな時に何を言っているんだ。
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