東京ヴァルハラ異聞録
ラグナロク
~両国~


久慈さんの呼び掛けで集まった人達が、両国付近に集まっていた。


他の軍も、秋本や名鳥、朝倉が呼び掛けてくれたのだろう。


両国を取り囲むように多くの人達が集まり、その時を待っていた。


だが、俺達が見たのは希望ではなく、どうすればわからない程の絶望。


「おい……なんだあれは。本当に、あんなやつと戦えるというのか?」


ビルの上で俺達が見たのは、溢れ返るポーンやナイト……そしてその王だと言わんばかりに佇む巨大な狼、フェンリルの姿がそこにあったのだ。


「やるしかないでしょう。その為にここに来たんです。頼りにしてますよ、久慈さん」


「ははっ……随分と過大評価されたもんだ。だが、やるしかないな」


それにしても、タイミングがわからないな。


誰が突入するか、誰がフェンリルと戦うかも決まっていないのに。


「大丈夫?震えてるよ昴くん」


「武者震いさ。沙羅、俺の手を握っていてくれ。ここからはずっと一緒に。沙羅が見た夢を、最後まで一緒に見よう」


こんな事を言うなんて、俺は怖いのか。


少しでも心を落ち着かせたいと、沙羅に手を差し出すと、微笑んでその手を取ってくれて。


「むっ!あれは……秋本と神凪か!?」
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