東京ルミナスピラー
神の日
雨が降っていた。
全ての音を包み隠すほどの激しい雨音の中で、女は赤ん坊が少しでも濡れないようにと、コートで覆って。
とある家のインターホンを押して、やっと雨から逃れることができたと壁にもたれてドアが開くのを待った。
「はいはい、どなた……って、恵梨香ちゃん!? どうしたのこんな雨の中! ずぶ濡れじゃないか。何が何だかわからないけど、中に入りなよ」
身長が高い細身の男は女を見るなり驚いて、ドアを開けて家の中に入るように促したが、女は首を横に振った。
「2年ぶりに顔を出して、いきなりこんなことを言うのもどうかと思うが……もうお前しか頼れる人がいないんだ。頼む、この子を……預かってくれないか」
そして、大事に抱えていた赤ん坊を男に差し出して、無理矢理に笑顔を作って見せた。
「赤ん坊……恵梨香ちゃんの? ますます話がわからないな。早く中に入って。こんなに濡れてちゃ風邪を……」
赤ん坊を受け取り、女に再び目を向けた男は、そこで言葉に詰まってしまった。
女が壁にもたれて腰を下ろしていた場所に、雨と血が混じった水溜まりが出来ていたから。
「ごめんね、葵……一緒に生きられなくて。強く、生きてね」
男に赤ん坊を託すと、女は安心したように眠りに就いた。
全ての音を包み隠すほどの激しい雨音の中で、女は赤ん坊が少しでも濡れないようにと、コートで覆って。
とある家のインターホンを押して、やっと雨から逃れることができたと壁にもたれてドアが開くのを待った。
「はいはい、どなた……って、恵梨香ちゃん!? どうしたのこんな雨の中! ずぶ濡れじゃないか。何が何だかわからないけど、中に入りなよ」
身長が高い細身の男は女を見るなり驚いて、ドアを開けて家の中に入るように促したが、女は首を横に振った。
「2年ぶりに顔を出して、いきなりこんなことを言うのもどうかと思うが……もうお前しか頼れる人がいないんだ。頼む、この子を……預かってくれないか」
そして、大事に抱えていた赤ん坊を男に差し出して、無理矢理に笑顔を作って見せた。
「赤ん坊……恵梨香ちゃんの? ますます話がわからないな。早く中に入って。こんなに濡れてちゃ風邪を……」
赤ん坊を受け取り、女に再び目を向けた男は、そこで言葉に詰まってしまった。
女が壁にもたれて腰を下ろしていた場所に、雨と血が混じった水溜まりが出来ていたから。
「ごめんね、葵……一緒に生きられなくて。強く、生きてね」
男に赤ん坊を託すと、女は安心したように眠りに就いた。