東京ルミナスピラー
とうとう黒井が西軍に侵攻してきた。


その事実を知った瞬間、俺は両手に武器を取り出して攻撃に備える。


「秋本を追うついでに篠田と一度戦おうと思ったが……また死んでいるのか。存外弱いな。興が削がれた。蘭子、戻って来い。粛清の時だ」


「パパ……」


蘭子の耳には、黒井の言葉はどう聞こえたのだろうか。


父親からの命令なのか、それとも同じ異形の仲間として聞き入れたのか、俺の手を振り払い、黒井の方に歩き出したのだ。


「おい! 蘭子を返せ! 蘭子は俺の仲間だ! あんたの勝手で連れ帰るなよ!」


「返せだと? 自分の子をどうしようと、貴様には関係ない。蘭子は戦闘においては申し分ない強さだったが、いかんせん優しいのが問題でな。絶望を味わわせる為に放してやったら……予想通り、しっかりと絶望に打ちひしがれたようだな。感謝するぞ」


俺が向けた怒りをのらりくらりとかわすように、黒井は自分の想いを語り始めた。


黒井の思惑通り、蘭子が絶望を味わって悪魔のような姿に変貌したのだから、それに関しては反論のしようもない。


俺では、その絶望に沈んだ蘭子を救えなかったということだから。
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