東京ルミナスピラー
美空ちゃんの言葉はわからなくもないんだ。


事実、多くの人が己の欲望のままに生きているし、それが普通で俺達みたいなのは異端だってことはわかってる。


それでも、この街のせいで家族がバラバラになってしまった俺からすると、最初から目的が違ったんだ。


権力を持つことでも、セックスに溺れることでもない。


願うことはただ一つ。


また、家族皆で暮らしたいってことだけだ。


「俺は……」


それを伝えようとした時だった。


まるで忍者のように、丸い中年男性が音も立てずに俺達の輪の中心に現れたのは。


「いやはや、第一波は凌いだようですね。恐らく第二波が動き出すには時間がありそうなので、皆さんは一旦休んで……げげっ! あ、安藤さんがどうしてこんな所に!?」


大塚さんが、夕蘭の胸を揉んでいる美空ちゃんを見て、大袈裟に驚いて見せた。


そう言えば二人とも東軍で、面識があってもおかしくないな。


「誰かと思ったらマスターじゃない。消えたと思ったら西軍の密偵なんてやってたわけ? そりゃあ僕がいくら探しても見付からないわけだ」


「あ、いえ。西軍ではなく南軍なんですが。それにしてもどうして安藤さんが……一番寝返りそうになかったのに」
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