東京ルミナスピラー
聖戦の真っ最中だと言うのに、俺達は戦うことを止めて父さんとタケさんの戦いを見ることになった。


「おい、葵……お前大丈夫かよ」


宗司が言いたいことはわかっているつもりだ。


俺の父さんとは言え、今は敵軍にいるわけで、味方の軍のタケさんを応援するべきなのだろう。


「さあ……もう、何がなんだか」


そう答えることが精一杯だった。


「篠田武久……拳帝とまさかこんな形で出会うことになるなんてね」


「お前も有名人だろ、名鳥順一。『今回』は俺を縛るものは何もねぇ。思う存分やり合おうぜ」


「ははっ……やっぱりそうなるよねぇ。息子の前でかっこ悪いところを見せるわけにはいかないし……本気でやるかね」


腰を落とし、両手で握り締めた槍をタケさんに向けた父さんに対し、両手を軽く握り、胸の前で構えたタケさん。


ジリジリと、少しずつお互いに近付いて。


ジャリッと、地面と靴が擦れた音が聞こえた次の瞬間。


タケさんの拳が、地面に突き立てられた父さんの槍の柄に打ち付けられていたのだ。


「速いねぇ……」


「そっちこそ」


ほんの一瞬だった。


気を抜いていたら、ただタケさんのパンチを父さんが槍の柄で受けたくらいにしか思わないだろう。
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