東京ルミナスピラー
そう言って立ち上がった父さんの顔は、どこか寂しげで……本当に悩んでいる時の顔だった。


俺が知っている限り、父さんがこんな表情をしたのは三度しかない。


それほどに複雑な事情があるのだろう。


「わからねぇことがあるなら、テメェの息子にでも相談しやがれ。いつまで現役のつもりだよ。いいか、そういうのを『年寄りの冷水』って言うんだよ。世代交代はしなきゃいけないんだぜ」


俺を指さして、父さんに説教を始めたタケさん。


父さんも苦々しく笑って俺を見詰めた。


「違いない。だけど、まだ俺だって戦える。自分の足で歩けるうちは、子供には背中を見てもらいたいもんだよ」


それはタケさんに言ったのか、それとも俺に言ったのかはわからなかったけど、父さんはただ強がってそんなことを言うような人じゃないということは知っている。


理由があるんだ。


「で、お前が子供に背中を見てもらいたい理由を教えろよ。それが西軍のキングを狙う理由なんだろ?」


ポケットからタバコを取り出して、口にくわえたタケさんが、父さんにもタバコを差し出す。


箱から一本取り出すと、それを口にくわえて火を点けた。


「……ついてきなよ。だけど、ちょっと刺激が強いかもよ?」
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