東京ルミナスピラー
今までギリギリまで我慢していたのだろう。


姉さんの顔を撫でるたび、父さんの目から涙が零れ落ちる。


わかるよ……父さんのその気持ち。


今のこの状況を知って、西軍を自由に動ける俺が、西軍のキングを見付けて父さんに教えれば……なんて考えているくらいだから。


今はまだ人間の心を保っているかもしれないけど、いつ完全な鬼になってしまうかわからないんだよな。


そうなってしまう前に、一刻も早くこの街から出してあげたいと思うのは当然じゃないか。


「なるほどな。塔に向かうには、今はまだ戦力が成熟してねぇ。となればキングを狙うしかない……か。全くよ。この街は何なんだよ。また真っ当に生きてる人間から大切な物を奪うつもりかよ」


吹雪さんのベッドの横にある丸椅子に座り、頭を抱えるタケさん。


「ひなたちゃん、ここは俺達の出る幕じゃねぇ。向こうで待ってようぜ」


「う、うん。なんか……苦しいね」


そんな空気に耐えられなくなったのか、杉村とひなたさんは待合室の方に歩いて行った。


この街では、他にも悲しいことが起こっている。


鬼になってしまった人もいる。


そうなったら問答無用で殺し合いをするしかないんだ。


ポケットに入っている木之本友里の社員証に触れて、この街の現状を改めて知った気がする。
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