東京ルミナスピラー
「あんまり舞桜をいじめんなよ。どれ、俺がまず先行する。お前らで、俺が付けた傷を大きく開いてくれ。伊良さん、頼むからグラビティプリズンを維持しててくれよ」


落下しながら拓真がそう言って、ビルの壁面を走りながらフェンリルへと迫った。


日本のショートソードを握り、その背中に向かって。


「別に私、怒ってないから。お兄ちゃんが幸せならそれでいい。私は……私を救ってくれた英雄と肩を並べて戦えてるのが嬉しいんだ」


「……前言撤回だ。良い女になったよ舞桜は。行くぞ。未来を紡ぐ為に。これはそういう戦いだ」


昴に小さく頷いた舞桜は、野太刀を肩に担いで一直線に拓真がいる場所へと向かった。


「うおおおおっ! 食らえよ! スピニングブレード!」


ショートソードを前に構え、空中で前転をするように高速回転を始めた拓真。


まるで回転ノコギリのように、フェンリルの背中に体当たりし、体毛を切断し、皮膚の表面を切り裂いた。


と言っても、僅かに傷が付いただけで、この巨体からすればただのかすり傷に等しかったが、拓真はさらにそこにショートソードを二本突き刺したのだ。


「文字通り切り開かなきゃな! 他の誰の物でもねぇ、俺達の未来なんだからよ!」


そして、思い切り左右に振り抜き、傷口を大きく開いた。
< 1,343 / 1,486 >

この作品をシェア

pagetop