東京ルミナスピラー
「やれやれ。相変わらず泣き虫だな葵は。まだおっぱいが必要なのか? これだけ大きくなったというのに」


泣きじゃくる俺の顔を覗き込んで、フフッと笑ったのは母さん。


「えっ!? おわっ! な、なんで! 今戦ったばかりなのに……」


「戦いが終わったからだ。なに、もう戦うつもりはない。私はクイーンだからな。クイーンの仕事をするだけだ。どれ、その前に起こしてやろう」


俺の記憶にはないけれど、私服の母さんが俺の腕を肩に回して起こそうとしてくれている。


今まで感じることの出来なかった母さんの温もりが伝わってくる。


血は止まって、傷の痛みはなくなっているけど、欠損した手足はそのままで、なんだか奇妙な感じだ。


「母さん……ありがとう」


「残念ながら、私は真治が生み出した紛い物に過ぎない。偽物でも良いなら、その言葉を受け取っておこう」


そうか……そうだな。


母さんはずっと昔に、俺を守って死んだんだ。


この母さんは、父さんの記憶ってことなのかな。


母さんに支えられて立ち上がった俺は、天井から何かが降りてくることに気付いた。


部屋の中心に、円柱の水槽のようなものが。


その中に入っていたのは……人間の。


おそらく、父さんと思われる人の脳だった。
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