東京ルミナスピラー
「別に怒ってないから!」


前から気になっていたけど、うちの両親と俺の彼女の……灯の両親は知り合いなのかな。


だとしたら、何かしたらすぐに話が回ってしまいそうで嫌だな。


「昨日も言ったけど、晩御飯はいらないからね。何か知らないけど、彼女の家でご馳走になることになってるからさ」


「やるなあ葵。お前まだ16なのに、もう両親に挨拶か。これは本当に近いうちに挨拶に行かなきゃだな」


「やめて父さん。本当にそういうのいいから」


父さんが張り切ると、昔からろくな事にならないんだ。


腕を回してやる気満々の父さんには悪いけど、喧嘩に行くわけじゃないんだから。


そして、背後に感じた殺気に振り返ってみると、母さんが恨めしそうに壁から顔を出して俺を睨んでいた。


「母さんも! いい加減子離れしてくれよ! じゃあ、行ってくるからね! 父さん、しっかり母さんの相手をしてくれよな!」


そう言って俺は、リビングを飛び出した。


「……何あれ。お兄ちゃん今日デートだっけ? 張り切ってんね」


「香澄ちゃんおはよう! 今日もママに似て可愛いんだから!」


俺と入れ違いにリビングに入った妹の香澄がいれば、母さんも上機嫌になるだろう。


母さんは、俺と香澄が大好きでたまらない困った人なんだ。
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