東京ルミナスピラー
信号が青になり、前から歩いてくるゴリ松も俺達に気付いたのか、驚いたような表情を浮かべて。


「あ、あら嫌だわ! こんなところで生徒と会っちゃうなんて! もう、私がデートしていたなんて言い触らしちゃダメよ! それよりあなた達もデートかしら?」


完全に浮かれているのがわかるな。


学校で見る、厳しいゴリ松とはえらい違いだ。


「なんだ? もしかして美智の教え子ってやつか? ん? お前の顔……どこかで……」


「あら、高山くんと知り合いだったりするのかしら?」


ゴリ松がそう言うと、男性は何か理解したような顔で小さく頷いて。


「高山……あぁ。なるほど。奇妙な偶然もあるもんだな。お前が生まれた時に、お前の両親に見せてもらったことがあるぜ、葵」


そう言って俺の頭を撫で回した。


両親の知り合いで、俺は良く母さんに顔が似ていると言われるから、この人もピンと来たのかもしれない。


「是松先生をよろしくお願いします。拓真さん」


「え? あ、ああ……それは……大丈夫だけどよ。俺、名前言ったか?」


灯の手を引いて横断歩道を渡った俺は、背後にいる二人に手を挙げて見せた。


夢でも何でも構わない。


俺が見た、不思議な世界の人達が目の前にいたのだから。
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