東京ルミナスピラー
ボソッと呟いた俺の言葉に、蘭子が何度も頷いて。


「な、なんだ。蘭子の友達だったのか。てっきり知らない人に声を掛けたのかと思って驚いたよ」


「そうだぞ。葵と灯は、蘭子の友達なんだ。葵は約束を果たすんだ。そうだろう? パパも蘭子の荷物持ちをしっかりするように!」


「はいはい……全く。休みの日になんだってこんなことを……」


ただすれ違って、去って行った親子だったけど、不思議な感覚だった。


「今の……夢の中で見たっていう、蘭子ちゃん? だったらあのお父さんは……」


「ま、まさかだろ。一度ならともかく、こんな偶然何度もあってたまるかよ。早く灯の家に行こうぜ。なんか今日はおかしな日だな」


強がってそう言ってみるけど、胸がざわつく。


俺は、何か大切な約束を忘れているんじゃないかって。


それを思い出させる為に、俺は最近同じ夢を見て、夢の中に出て来た人が現れているんじゃないかってさ。


灯の両親に会うって日に、どうしてこんな奇妙なことばかり起こるんだ。


「だ、大丈夫? 気分でも悪い? 何ならうちに来るの、今度にする?」


灯が気遣ってそう言ってくれるけど、俺は首を横に振った。
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