東京ルミナスピラー
夕蘭と灯が、年が近いせいか打ち解けるのも早くて助かる。


「しかし千桜さん。意思の統一をしたところで、どうしてワシらは戦わなあかんのや? わざわざ分断されて戦わされとるけど、これは誰がそうさせとるんや。ワシらは協力してこの窮地から抜け出さんとあかんのと違うか?」


「大和さんの意見はもっともなんですが、まだ時期ではないんですよ。皆さんは、『ヴァルハラ』というのをご存知ですか?」


夕蘭と灯に相槌を打ちつつ、隣のテーブルの話に聞き耳を立てる。


ヴァルハラと言えば……北欧神話に出てくる、戦士の宮殿か。


「あれじゃろ? そこで来るべきラグナロクに備えて、戦士が戦い続けるってやつや」


大和さん、身なりはみすぼらしいのに色んなことを知ってそうだな。


人は見た目によらないってやつだ。


「ええ。この街はまさにそれだと思います。両国に現れた白い塔。そしてその周囲には鬼がいる。さっき遭遇した鬼は、恐らくあれでも知能のある鬼の中では下っ端のはずです。両国に近付けば近付くほど、もっと強大な鬼がいるに違いありません」


千桜さんの言葉に、俺は顔を引きつらせた。


あの鬼が下っ端とか、冗談だろ。


そんなの、鬼が本気を出したら街からほとんどの人間がいなくなってしまうじゃないか。
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