東京ルミナスピラー
「だから我々は、あえて敵味方に分かれて、お互いに強くなる為に殺し合っているんです。来るべきラグナロクに備えてね。でも、それは今じゃないんですよ」


「むう……確かにあの鬼が下っ端というなら、聖戦で敵軍と殺し合いでもしてレベルを上げんと歯が立たんな。おあつらえ向きに、ソウルストーンがある限り死にはせんし、復活して一日経てばソウルストーンは一つ回復する。なるほど、確かに鍛えるには良い環境やな」


「そうです。何もわからないまま、名前も知らない人と殺し合いをさせられている。そう考えてしまえば、恨みや憎しみが生まれてしまうかもしれません。ですが、強くなるためにお互いに競っていると考えれば……聖戦も、少しは気が楽になりませんか?」


チラチラと、俺を気にしているように千桜さんがこちらを見る。


まるで、人を殺すことを躊躇していた俺の心を見透かしているように。


「……なるほどね。そう考えたら、人と戦うのも罪悪感がないかもね。あのクソ親父はそんなこと考えてなさそうだけど」


メニューを見ながらも、千桜さんの話を聞いていたのか、夕蘭が小さくそう呟いた。


皆当たり前のように戦っていたけど、それが普通じゃないんだよな。


だからこそ、千桜さんの言葉は夕蘭や灯にはいい変化をもたらしてくれそうだ。

< 195 / 1,486 >

この作品をシェア

pagetop