東京ルミナスピラー
母さんの車の助手席に乗り、シートベルトを締めた。


「……葵、本当にごめんなさい。私は母親失格ね。あなたにしか出来ないからって、子供を頼るなんて」


車を発進させて、小さく呟いた母さん。


そんなことばかり考えてて、ゆっくり眠れたのか心配になるよ。


「大丈夫だって。深く考えすぎなんだよ、母さんは。危ないと思ったら逃げるし、その前に父さんと姉さんを見付けてやるさ」


「そう……ね。あなたは北条葵。強い両親の血が流れているんだから。どんなことがあっても切り抜けられるわ」


強い両親……か。


高山真治が俺の父親だって母さんは言ったけど、それは俺にとってはどうでもいいことだ。


車に乗って50分。


やはり秋葉原に向かう道は通行止めになっていて、途中でUターンする車で渋滞が起こっていた。


「ここまでしか進めないみたいね。葵、大丈夫? ここから歩いて行ける?」


「んー、まあ、真っ直ぐ行くだけだから大丈夫。ありがとう母さん」


俺がそう言ってシートベルトを外そうとした時だった。


「お、おい、なんかもう降りるみたいだぞ?」


「え? 嘘! ちょっとこれ、どうやって降りれば良いのよ」


……後部座席の方から、聞き覚えのある声が聞こえて来た。
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