東京ルミナスピラー
「しまった……そりゃそうだよな。あの速度で走ってるんだから、目を離したら見えなくなるのは当然だよな」


「な、なんかごめん……私のせいだ」


夕蘭が申し訳なさそうに言うけど、そうじゃない。


「夕蘭のせいじゃないって。俺の為にやってくれたんだろ?」


「な! べ、別にあんたの為じゃないし……ただ、死なれるのは困るだけだし!」


わかりやすく照れる夕蘭の頭にポンポンと手を乗せて、俺はどうするかを考えた。


ここからなら引き返すこともできるし、西軍で大和さんと灯を待っても良いけど……。


何か、嫌な予感がするんだよな。


「と、ところでどうするの? このまま進むの?」


「そうしよう。何かさ、戻ったらダメな気がするんだよな」


それは、俺の単なる勘に過ぎないけれど、その勘が引き返すことを許してくれない。


「ふぅん……あのオレンジの人は隅田川まで『池田派』の縄張りだーって言ってたから、隅田川の向こう側まで行けばいいんじゃないかな? わかんないけど」


「隅田川か……そこに行くまで何もなければ良いけど」


大通りを行くより、このまま路地を進んだ方が目立たなくて済むかな。


そう思って真っ直ぐ突き進んだけれど……。
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