東京ルミナスピラー
「葵、ちょっといいか?」


ぼんやりしている俺の前に、悩んでいる様子の舞桜がやって来た。


何となくだけど、言いたいことはわかる。


「何? 結城さんと戦うか、守るかで悩んでるの?」


「うっ! す、鋭いな。今の高校生はこんなにも察しがいいのか?」


「見てたらわかるよ。舞桜は結城さんが好きなんだろ? そりゃ、悩むよな」


俺がそう言うと、舞桜は顔を真っ赤にして俺の横に立って。


身体を壁に預けるようにもたれて手で顔を覆った。


「あ、改めて言われると恥ずかしい」


「よく言うよ。結城さんに抱きついて、結婚しようって言ってたくせに」


「あ、あれは! その、気持ちが暴走したというか……本心が身体を動かしたというか」


それが、拓真に刃を向ける原因にもなったのだろう。


だけど、そうやって考えるよりも先に身体が動いた……みたいな、愛する人を守りたいって気持ちはわかるし、すぐに動けるのは羨ましくもある。


「葵にはいないのか? 好きな人は」


そう言われて、俺は天井を見上げた。


好きな人……姉さんは好きだし、助けたいと強く思っているけど、きっと舞桜が言っている好きとは違うんだろうな。
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