東京ルミナスピラー
しばらくして、灯の唇が離れる。


その代わりに額をコツンと当てて。


「私は……葵が生きてるならそれでいい。他の人がどうとか考えられないよ」


そう言うと、頬に添えていた手を背中に回して、俺と灯はベッドに倒れた。


正直、状況が把握し切れなくて、俺の手は宙を泳いでいる。


「あ、灯?」


「私ね、ずっと葵が好きだった。最初は家族として好きだったけどさ。ああ、そういう好きじゃないんだなって、葵がお姉ちゃんを助けに行くって言った時に気が付いたんだよ」


ドキドキしてる。


灯の顔が、丁度俺の心臓の辺りにあって、その音を聞かれているのかと思うと恥ずかしいような。


「だからね、一緒にいたくて。お姉ちゃんに取られたくなくて、ついてきちゃった」


俺は……どうすればいいんだろう。


灯も姉さんも、もちろん父さんも母さんも家族として大好きだ。


この街に来たのだって、その想いは変わらない。


でも、血の繋がりがないとはいえ、妹がこうして俺に想いを伝えてくれている。


想いに応えるなんて簡単だ。


灯を抱き締めて、本能の赴くままに灯を求めればいい。


でも……それは何か違う気がする。
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