東京ルミナスピラー
「どうした? 何かあったか?」


抱き締める……と言うより、優しく包むように灯の頭を撫でた。


何かあったかなんて、殺し合いをさせられる街に入って、誘拐もされたのに何を言ってるんだ俺は。


「……葵らしいね。私、勇気を出したんだけどな。やっぱりお姉ちゃんには勝てないのかな」


「い、いや、そういうことじゃなくて。お前も姉さんも家族だし、俺は今まで育ててもらった恩があって、それなのにお前に手を出したら申し訳ないと言うか……な、何言ってんだろ俺」


恋愛経験のない童貞が、こんな状況を上手く切り抜けられるわけがないじゃないか!


右手は灯の頭を撫でてても、左手は相変わらず宙を泳いでいるんだぞ!


「ごめんね。寝ようとしてたよね? 困らせるつもりはなかったんだ」


少しの沈黙の後、灯が身体を起こしてベッドから立ち上がってそう言うと、今度は服を脱ぎ出した。


「こ、困らせるつもりはなかったって言っておいて、今度は何を!」


「シャワー、借りるね。疲れてるでしょ? 葵は寝てて良いから」


そう言うと、灯は下着姿になって浴室に入って行った。


寝てて良いからって……こんな状況で寝れるわけがないだろ。
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