東京ルミナスピラー
布団に入り目を閉じていると、カチャッという、浴室のドアが開く音が聞こえた。


ドキッとしながら、灯がどうすのかを寝たフリしながら聞き耳を立てていると。


「もう寝た? 葵、頑張ってくれたもんね。鬼とも戦ったし、拐われた私達を助けてくれたし」


独り言のように呟きながら、布団が捲られる感覚があった。


ベッドが軋む。


灯が布団の中に入ってきて、俺の背中に寄り添うように横になったのだ。


「小さい頃は一緒に寝てたよね。また一緒に寝るなんて思わなかっ……いたっ!」


突然聞こえた灯のその声に、俺は何があったんだと身体の向きを変えた。


「ど、どうした? 大丈夫か?」


「やっぱり寝たフリしてた。バレバレなんだからね」


そうして、向かい合った俺に顔を近付けてキスをする。


お風呂上がりの良い匂いと、柔らかい唇の感触で、また頭の中が真っ白になる。


気付いたら俺は、灯を抱き締めていた。


理性と欲望の境界線をさまよいながら、どちらに転ぶかわからない状態。


「無理……しなくてもいいよ。私は葵が傍にいてくれるだけで幸せだから」


そんな中で灯が言ってくれたこの言葉が、俺の心を決めたのかもしれない。
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