東京ルミナスピラー
「皆を感じる……葵、灯、お父さん。お母さんがいないのが寂しいけど……私、皆が帰ってくるの……待ってるね」


あの日、この街が光に包まれた日。


姉さんがもう少し遅く帰ってさえいれば。


体調不良で学校を休んでさえいれば。


こうして残酷な運命に翻弄されることなんてなかったんだ。


「光……ごめんな。父さん、お前を苦しめただけだった。助けるつもりだったのによ、本当にダメな親父でごめんな」


「そんなこと……ないよ。お父さんは私を守ってくれた……灯も葵も……こんな姿の私を……お姉ちゃんって呼んでくれた……私、幸せだね」


もう、言葉が出ない。


何を言っても最期の言葉になってしまいそうで。


だけど、これだけは言いたかった。






「姉さん……皆で、家に帰ろうね」





「葵……うん……そう……だね」





その声が……消えそうなほどにか細いその声が聞こえた直後、俺の腕の中で命の灯が消えるのを実感した。


俺達に支えられながら、姉さんは人としても死ねず、鬼にもなり切れずに。


姉さんを苦しめていた鬼への変化……その象徴である角が、黒いモヤとなって消えて行く。


角がなくなった姉さんは……少し痩せ細っていたけど、やっと人間に戻れたんだ。
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