東京ルミナスピラー
「断っちゃって良かったの? もしかしたらあの少年、化けるかもよ? それに、あんな言い方して。バベルの塔のてっぺんで、願いが叶うって言えば良かったのに」


「そんな、どこから湧いたかもわからん噂を今言っても仕方あるまい。今はまだ、我々の胸に秘めておくべきだ。そもそもあの少年……私達の戦闘に耐えられるほど強いとは思えん」


「そりゃまあ確かにね。恵梨香の優しさってわけだね。へへっ」


今、吹雪さんは恵梨香って言ったか?


このドクロのフルフェイスが、まさか。


その女性はそう言うと、ヘルメットを脱いで髪を掻き上げると白い塔を見上げた。


白く、透き通るような綺麗な肌。


直感でわかる。


これはやっぱり母さんなんだって。


「バベルの塔……か。こんな殺し合いしかない街で、何も希望がないなどとは言わせん。願いは叶う……必ず希望はある。だからお前も諦めるな」


その言葉は……俺に言われているような気がしてた。


ただ、運命を呪って、家族の死を悲しんで眠っているだけの俺に。


「わかってるっての。恵梨香って時々、自分に酔ってるみたいな言い方するよね。そういうお年頃?」


「う、うるさいぞ! しかしまあ……なんだ。ここで足踏みなんてしていられない。行くぞ」


若い吹雪さんと母さんのやり取りの後、母さんが俺に向かって手を伸ばした。


俺は……その手を取ると光に包まれて。


目を開けると、母さんの手を掴んだ右手に……トンファーが握られていた。
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