東京ルミナスピラー
「『バベル』や『ヴァルハラ』を経験した人の間では、どうやらそのように呼ばれているようですね。『運命の少年』とは、一個人を指す言葉ではありません。運命に導かれ、数多の絶望を経験し、そして魂を解放する者達。僕はそのように解釈しています。あやせくんだけじゃありません。そちらの宗司くんも蘭子さんも、きっと『運命の少年』なのです」


話をしながら千桜さんに案内されて、やって来たのは蛎殻町公園の横にある、例のビルだった。


階段を上り、屋上を目指しているのだというのが、目的地を言わなくてもわかる。


「でもよ千桜さん。俺達はそんな大層なものじゃないぜ? 幼馴染みを守る為に戦って、強くなって、今日を生きる小銭を稼ぐ毎日だ。もうおっさんでも、明確な意志を持ってる結城さんの方がよっぽど『運命の少年』っぽいぜ」


「なんとなく宗司の言ってることはわかるな。俺達は何もわからずに、この街で起こってることに振り回されてるだけな気がする。ただ流されてるだけなんじゃないかって、時々思うんだ」


俺達が「運命の少年」と呼ばれるのを否定したいわけじゃないけど、どうにも千桜さんの期待が大きすぎるんじゃないかと思って。


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