東京ルミナスピラー
「やや、どうもどうも。お久しぶりです昴くん、千桜さん」
この愛想の良い中年……と言うよりはもう老人と言っても良い年齢の男は、昴と千桜とにこやかに握手を交わして何度も頭を下げた。
「腕が黄色……東軍ですか。って、いいんですか? そんな情報を敵の俺達に渡して」
昴がそう言うと、大塚は顔を上げて苦笑いを浮かべた。
その表情は大塚には珍しく、何か言いたいことがあるのだろうかと、昴は感じ取っていた。
「いやはや、お恥ずかしながら……私は東軍から逃げて来たんです。津堂さんの実験のことは知っていますか?」
「実験というと……もしかして、灯ちゃんが化け物に変化したあれのことか……」
「知っておられるなら話は早いです。鬼の細胞を人間に投与し、人間でありながら鬼の強さも手に入れようという実験らしいのですが。私は鬼の細胞を投与される前に逃げ出して来たのです」
昴は、蛎殻町公園の横のホテルで、葵と見たあの光景を思い出していた。
人体実験の末、腹を食い破られてしまった人間の死体。
化け物に変化する直前の灯の姿。
どの光景も、昴にとって思い出すには精神的にきついものばかりだった。
この愛想の良い中年……と言うよりはもう老人と言っても良い年齢の男は、昴と千桜とにこやかに握手を交わして何度も頭を下げた。
「腕が黄色……東軍ですか。って、いいんですか? そんな情報を敵の俺達に渡して」
昴がそう言うと、大塚は顔を上げて苦笑いを浮かべた。
その表情は大塚には珍しく、何か言いたいことがあるのだろうかと、昴は感じ取っていた。
「いやはや、お恥ずかしながら……私は東軍から逃げて来たんです。津堂さんの実験のことは知っていますか?」
「実験というと……もしかして、灯ちゃんが化け物に変化したあれのことか……」
「知っておられるなら話は早いです。鬼の細胞を人間に投与し、人間でありながら鬼の強さも手に入れようという実験らしいのですが。私は鬼の細胞を投与される前に逃げ出して来たのです」
昴は、蛎殻町公園の横のホテルで、葵と見たあの光景を思い出していた。
人体実験の末、腹を食い破られてしまった人間の死体。
化け物に変化する直前の灯の姿。
どの光景も、昴にとって思い出すには精神的にきついものばかりだった。