東京ルミナスピラー
「おっと、南軍に来て随分好き勝手やってくれるもんだな。悪いけど、あんたの好きにはさせない」


昴が二人の間に割って入り、日本刀の柄に手を添えたのを見て、沼沢は明らかに不機嫌な表情に変わった。


チェックの赤いマフラーで鼻から下を隠しているものの、目だけで感情を察するのは十分だった。


「誰だお前は。虫唾が走る武器を振り回しやがって。俺をイラつかせるな」


今度は右手を昴の顔に素早く向けた沼沢。


あれほどの実力を持つ千桜が、なぜこうも簡単にやられたのか。


その理由を昴は本能で感じ取った。


ほんの一瞬、瞬きをした刹那、沼沢の手から放たれた鎖分銅が一直線に顔に伸びて。


それを認識するまでの極わずかな時間で、敵を粉砕している。


そして、開くのが少しだけ速い方の目に向かって投げられていた為、遠近感が掴みにくかったのだ。


その狙いに気付き、日本刀を引き抜いて鎖を斬り付けながら、横に素早く飛び退いて回避する。


「……お前、ただの雑魚じゃないな? 名乗れ。忘れない間は覚えておいてやろう」


「随分上からじゃないか。俺は結城昴。別に今すぐ忘れてもいいよ」


「俺は沼沢裕樹(ゆうき)。同じ『ゆうき』同士、仲良くやろうじゃないか」
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