東京ルミナスピラー
不敵な笑みを浮かべる沼沢の思惑がわからずに、昴は攻撃を仕掛けることが出来なかった。


武器は、鞭のように自在に動くかと思えば、槍のように一直線に襲いかかって来る鎖分銅。


さらに、この鬼と化した沼沢の実力も未知数となれば、迂闊に飛びかかれば千桜のようにやられてしまうのは明白。


少ない情報から勝機を導き出す。


それが、結城昴が南軍最強と言われる所以だった。


「結城さ~ん。なんか大きな音が聞こえましたけど、どうかしたんですかぁ?」


突然背後から掛けられた声に、一瞬振り返りそうになったが、昴は沼沢から目を逸らすことなく睨み続けた。


その声の主はミモザ。


沼沢を見るなり、驚いた様子で二度見したが、高速で振り上げられた沼沢の手から放たれた鎖分銅が顔面に直撃して吹っ飛ばされ、屋上の出入り口のドアにぶつかって倒れたのだ。


「結城昴。お前が動かないから仲間が死んだ。つまり、仲間の死はお前のせいということだ」


ニヤニヤと笑いながら、ミモザを仕留めた鎖分銅を引き戻した沼沢だったが、昴が全く動揺していないことに苛立ちを覚えて、「チッ」と小さく舌打ちをした。


いや、動揺していないどころか、微かに笑っていたのが癪に触ったのだろう。
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