東京ルミナスピラー
「悪いな。俺も平気で嘘をつく悪い大人になっちまったってことだ。それにしても……俺一人でやれないなんて、流石は東軍の沼沢ってわけか」


沼沢が落下した、崩れたマンションの屋上を見ながら、勝利を確信した昴は千桜とミモザに親指を立てて見せた。


「流石……昴くんですね。あれから18年経っても、衰えるどころか技に磨きが掛かったようですね」


「何言ってるんですかマスター。俺が気付かないとでも思ってるんですか? 俺だけじゃなく、ミモザと千桜さんの足場まで作ったのを知ってるんですからね」


「おっと、それも含めて流石! まさかあの状況でそれを確認出来ていたとは! 改めて素晴らしい!」


小さく何度も、高速で手を叩いて満面の笑み大塚にも親指を立てて微笑んだ昴。


「いやいや、敵の生死を確認もせずに何を言っているんですか! 忘れたんですか、わたるくん! この下には……」


砂埃が舞う崩れた屋上の前で、千桜が慌てた様子で昴にそう言うと、昴も思い出したかのように穴に駆け寄る。


「そ、そうでしたね。昨日引き取ったばかりで忘れてました。多分、この位置なら大丈夫だと思うんですが……」


「ど、どうかしましたか昴くん。この下に何かあるんですか?」


大塚も気になった様子で、三人がいる場所に駆け寄って尋ねると、昴は少し考え込んだ後に口角を上げて小さく呟いた。


「……希望? ですかね」
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