東京ルミナスピラー
「つまり、東軍の連中は鬼になることで救われていて、元の世界に戻ることは望んではいない。俺達がバベルの塔に登ることを邪魔してくる……って認識で良いですか?」


「……残念ながら。他の方でしたら、緑川さんは心臓に持病が。安藤美空(あんどうみそら)さんという方は、筋肉が萎縮するという難病でしたが、津堂さんの実験によって救われた……と言いましょうか」


果たしてそれが救いになっているのか、昴には答えようがなかったが、それを否定して代案を出せと言われたら何も出てこない。


津堂の行為は完全に悪だと思っていたけれど、救われる人もいるというのは、昴には納得が出来そうになかった。


その為に、多くの人がこの南軍で人体実験をされて命を失い、灯が凄惨な運命を辿ることになってしまったというのは、昴だけではなく、多くの人が知るところだったから。


「それで、マスターはどんな病気なんですか? 沼沢が東軍に戻れ、運命を受け入れろと言っていましたが。あれはマスターを気遣っていたんじゃないですか? もしかして」


昴が尋ねると、大塚は驚いて苦笑いを浮かべた。


まさか、これまでの数少ない情報から、それを推察するとは思わなかったのだろう。


大塚は口篭りながらも、ポツリポツリと話し始めた。
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